“人の心に届くマーケティング”を実現するための、感情設計フレームワークを解説
目次
1. 「売れる言葉」は共感から生まれる
なぜ、論理だけでは人は動かないのか?
「商品のメリットは明確に伝えているはずなのに、反応が薄い」
「比較表も用意して、数字でも勝ってる。でも買ってもらえない」
そんな経験、ありませんか?
それは、“情報”ではなく“感情”が不足しているからかもしれません。
現代の消費者は、性能や価格よりも、「自分ごと化」できるかどうかで反応を決めています。
共感は「鏡」である
共感とは、「あなたの気持ち、わかるよ」と感じること。
でもその前提には、「自分の感情や経験と似ている」という投影があります。
- 自分の課題と似ている
- 自分の過去と重なる
- 自分の未来像と一致する
こうした“感情の鏡”をつくることができれば、
あなたの言葉は一気に刺さる「共感の言葉」に変わります。
論理<感情で動く、がデータで証明されている
心理学者アントニオ・ダマシオの研究では、
「感情を失った人間は、合理的な選択すらできなくなる」ことが判明しています。
選択や購買は、論理で分析した後、感情で決定されるというのです。
つまり、「伝えるだけでは足りない」
必要なのは、“感じさせること”。
言葉は「情報」+「情緒」で初めて届く
たとえば同じ意味でも、表現によって反応は変わります。
- 【情報型】:「この商品は、糖質オフです」
- 【感情共鳴型】:「甘いものを我慢し続けてきたあなたへ。もう、罪悪感なしで食べていい。」
後者は、“感情のトリガー”に直接働きかけています。
こうした言葉づくりこそが、「共感を設計する」ということ。
感情をどのようにマーケティング導線に落とし込むのか、
カスタマージャーニーを「感情ベース」で再設計する方法を紹介します。
2. 感情ベースで設計するカスタマージャーニー
ユーザーの「気持ちの流れ」に合わせて導線をつくる
従来のカスタマージャーニーは、
「認知 → 興味 → 比較検討 → 購入 → 継続」という機能的な流れで設計されていました。
しかしこれだけでは、「人はなぜ動いたのか?」という感情の起伏が見えてきません。
行動は感情に引っ張られるもの。ならば、“感情の波”を可視化することがカギになるのです。
感情軸のジャーニーとは?
感情ベースのカスタマージャーニーでは、ユーザーの「気持ちの変化」に注目して導線を設計します。
例:オンライン英会話サービスの感情曲線(理想型)
フェーズ | 感情 | 適切なアプローチ |
---|---|---|
認知 | 不安(英語できない) | 「大丈夫、ゼロからでOK」と伝える広告コピー |
興味 | 期待(話せるようになりたい) | 体験談・成功例を見せて希望を増幅 |
比較 | 疑念(続けられるかな) | Q&A、サポート体制で不安を払拭 |
購入 | 安堵+緊張 | 初回の体験に安心設計を施す |
継続 | 喜び・自信 | 成果の可視化と応援のコミュニティ設計 |
「どんな感情の波が起きているか?」を設計図にする
ユーザーが購入に至るまでには、
- 興味と不安が交錯する
- 一歩踏み出すか迷う
- 購入後も「これでよかったのか」と不安になる
こうした心理的アップダウンがあります。
この揺れを事前に想定して、「共感・安心・納得」するポイントを設けることが、
感情設計されたマーケティングの導線です。
導線に感情を組み込むチェックポイント
- 【ファーストビュー】不安や期待を代弁する言葉があるか
- 【ストーリー】自分の状況と重ねられる感情表現があるか
- 【CTA前後】「よし、やってみよう」と思える後押しがあるか
- 【購入後】「間違ってなかった」と感じられる体験設計があるか
これらを意識することで、
単なる“機能的ステップ”が、“感情に寄り添う旅”へと変わります。
3. シェア・バズ・拡散される感情トリガーとは?
「なぜ人はわざわざコンテンツを共有するのか?」
あなたは最近、どんな投稿を「シェア」や「いいね」しましたか?
それは、情報として有益だったから?
“心が動いたから”ではないでしょうか?
バズる投稿、拡散される記事、シェアされる広告。
これらには共通する「感情トリガー(Emotional Triggers)」があります。
つまり、人の心を揺さぶる“感情のスイッチ”が押されているのです。
バズを生む6つの感情トリガー
社会心理学者ジョナ・バーガー氏の研究などからも明らかですが、
人が「他人に伝えたくなる」きっかけとなる感情は、おおよそ以下に分類されます。
① 驚き(Surprise)
「え、そんなことあるの!?」
予想を裏切られたとき、人は他者に伝えたくなります。
② 共感(Empathy)
「これ、私のことだ」
感情や経験に寄り添う内容は、シェア欲求を刺激します。
③ 喜び(Joy)
笑える、嬉しい、癒される。ポジティブな気持ちは伝染する。
④ 怒り(Anger)・悲しみ(Sadness)
社会的課題、理不尽、不公平。ネガティブでも“正義感”や“共感”を動機に広がる。
⑤ 優越感(Pride)・自己表現
「これ知ってる自分すごくない?」という動機で拡散される知識系・ノウハウ系コンテンツ。
⑥ 所属感(Belonging)
「同じ価値観の人たちと繋がりたい」
ブランドやコミュニティ性を感じる投稿は、共鳴しやすい。
シェアされる文章は「感情の再現装置」
言葉の目的は、情報の伝達ではなく感情の共有です。
わかりやすく言うと
- 「がんばってるの、誰も気づいてくれないって思ってた」
- 「あの一言が、ずっと胸に残ってる」
- 「誰かに言ってほしかった、それでいいんだよって」
こうした文章は、“過去の自分”や“今の悩み”を照らし出し、
読者の心に「私のことだ」と火を灯します。
結果、「共感→拡散」が自然に起きるのです。
SNSで反応されるコンテンツの3つの条件
- 感情が動くこと
→ 情報ではなく“気持ち”が動いた瞬間にシェアされる - 言語化困難な感情を代弁していること
→「それ、言葉にできなかったけどそういうこと!」が鍵 - 自己投影できる余白があること
→ 読者が自分の体験に重ねられるような“共通点”の設計
コンテンツを「感情トリガー」で設計するチェックリスト
- 一度読んだら忘れられない“ひっかかり”があるか?
- この投稿は、どんな感情に火をつけているか?
- 読者の“今”にフィットするタイミングで出しているか?
- 「誰かに伝えたい」と思えるフレーズは含まれているか?
- 短く、感情が立ち上がる導入になっているか?
4. 感情理解をマーケティングに落とし込む設計フレーム
“なんとなくウケた”を、“再現できる”に変える
「今回は反応が良かったけど、なぜかわからない」
「感覚で作ったコンテンツがバズったけど、次が続かない」
これは、感情を“勘”でしか捉えていない状態です。
マーケティングで成果を再現するには、感情を設計するためのフレームワークが必要です。
感情設計=ユーザーの「感情変化」を事前に想像すること
まず前提として、感情設計とは「感情をコントロールすること」ではありません。
「この場面で人はどう感じるのか?」を事前に設計に組み込むことです。
人は、広告を見た瞬間、商品を比較した瞬間、購入を迷った瞬間、
それぞれに異なる感情を抱きます。
この“タイミングと感情の対応表”をつくることで、
一貫して「気持ちが動くマーケティング導線」が完成します。
感情設計フレーム【E-MAP】の紹介
ここでは、感情を構造的に扱うための設計思考
Emotion Mapping Framework(E-MAP)をご紹介します。
【E-MAPの4ステップ】
- Emotion Point(感情が動く瞬間)を洗い出す
→ 認知・接触・比較・購入・継続・離脱など、タッチポイントごとの感情を列挙 - 感情の質と方向性を分類する
→ 期待・不安・共感・抵抗・安心・達成感などに分類 - 感情変化に対応した要素を設計する
→ たとえば「不安」にはFAQや保証を、「期待」には未来のイメージ訴求を - 感情シナリオでコンテンツを構成する
→ 広告、LP、ステップメール、動画などに「感情の流れ」を落とし込む
ケーススタディ:オンラインフィットネスサービス
想定ユーザーの感情変化
- 【認知】自分でもできるかな?(不安)
→「未経験からでも始められる安心感」を訴求 - 【検討】他と比べて何が違う?(疑念)
→「比較不要の特徴」「継続率の高さ」を提示 - 【初回体験】本当に続けられる?(期待と恐れ)
→「仲間がいる」「一緒に頑張る」感情的な支えを設計 - 【継続】自分は変われているのか?(モチベ維持)
→ 進捗の可視化とフィードバックのタイミングを演出
このように、ユーザーの気持ちを先回りして設計することで、
満足度・LTV・リピート率すべてが上がっていきます。
感情は「企画の初期」から設計せよ
多くの人がやってしまいがちなのは、
「感情は最後に言葉で足せばいい」と考えること。
でもそれは逆です。
感情設計は、“最初の一行”から始めなければならない。
- 誰が、いつ、どんな気持ちでこの投稿を読むのか?
- どんな感情を抱えた状態で商品に出会うのか?
- どんな心理で次のページに進むのか?
これらを最初から設計図に組み込むことが、成功するコンテンツ設計の鍵になります。
5. 心に届くマーケティングのために、今あなたができること
数字では動かない時代に、「人の気持ち」が最大の武器になる
私たちが毎日目にする広告、SNS投稿、LP、動画…。
これらが一瞬でスルーされるか、それともスクリーン越しに“止まって読まれるか”を分けるのは、
たったひとつ――感情です。
価格でもスペックでもない。
「自分のことだ」と感じた瞬間、人は反応する。
そしてその反応こそが、マーケティングの第一歩になります。
感情を設計できる人が、これからの時代を制する
テクノロジーやAIが進化しても、感情は“人間にしか扱えない領域”です。
だからこそ、共感をつくり、感情の起伏を設計できるマーケターは、
最強の武器を手にしていると言っても過言ではありません。
まずは「感情を見る目」を持つことから始めよう
感情マーケティングを始めるのに、特別なツールや予算は必要ありません。
今すぐできる第一歩はこれです。
- ユーザーの「行動ログ」の裏にある感情を想像してみる
- SNSやレビューの“言外のニュアンス”に注目する
- コピーを書くとき、「これはどんな気持ちに響くか?」と問いかけてみる
小さな観察・想像・言語化の積み重ねが、
“人に届く”マーケティングをつくります。
今回のまとめ
- 人は論理で納得し、感情で行動する
- 感情トリガーを押すことで、シェア・バズ・購買が起きる
- カスタマージャーニーは、感情の起伏をベースに設計すべき
- 感情設計は「直感」ではなく「構造化」で再現可能
- 最後に人の心を動かすのは、テクニックではなく“想像力”と“共感”なのです。