目次
1. 顧客の「言葉」を信じてはいけない理由
アンケートやヒアリングが“役に立たない”とき
「お客様の声を反映しました」
「ユーザーインタビューの結果を元に改善しました」
よくある施策の背景ですが、あなたはその施策が本当に効果を出していると自信を持って言えるでしょうか?
実は、マーケティングの現場で最も多い失敗の原因はここにあります。
そう、“顧客の言葉”を鵜呑みにしてしまうこと。
なぜ「買うと言っていたのに買わない」のか?
「欲しいって言ってたのに、なぜ買わないの?」
これは、多くのマーケターが一度は突き当たる壁です。
この答えはシンプルで、
人は“言葉”ではなく“行動”で本音を語るからです。
言葉は、建前や理想、空気を読んだ表現に左右されがち。
でも、行動にはウソがつけません。
- 「環境に配慮してます」と言いながら、プラスチック製品を選ぶ
- 「健康に気をつけてる」と言いながら、ファストフードを食べる
- 「節約したい」と言いつつ、ついコンビニで買い物する
こういった行動の中にこそ、顧客の本音=ニーズが隠れているのです。
表面ニーズと行動ニーズのギャップに気づくことが第一歩
顧客は、必ずしも自分のニーズを明確に理解しているわけではありません。
それどころか、多くの人は「自分がなぜそれを欲しがっているのか」を説明できないのです。
例を挙げると、「持ち運びに便利だからミニバッグが欲しい」と言う人が、
実際には「無駄な荷物を持たない自分になりたい」という心理で選んでいることもある。
このような“意識していない動機”は、
アンケートやインタビューでは表面に現れないため、
行動観察・購買分析・回遊パターンの解析などを使って掘り起こす必要があります。
本当に売れる商品は「声にならない欲求」に応えている
ベストセラーやヒット商品には、共通点があります。
それは、顧客が“言語化できていない欲求”にフィットしていることです。
- iPhoneの「ホームボタンをなくす」という設計
- 無印良品の「説明しすぎない」パッケージデザイン
- Netflixの「次のエピソード自動再生」機能
これらはすべて、顧客が「こうしてほしい」とは言っていなかったけど、
出された瞬間に「これだよ!」と感じたプロダクトやUIです。
顧客インサイトとは「言葉の奥にある真実」
本当のマーケティングは、「言っていること」ではなく、
「なぜそう言うのか」「なぜそう行動するのか」を深掘りすることから始まります。
つまり、顧客の声を聞く前に、
顧客の行動を“観察”する力が求められる時代なのです。
マーケター自身も「わかる…その失敗経験ある」と思わず頷くような、
共感ベースのストーリーを通じて、さらに理解を深めていきましょう。
2. 「私もそれで失敗した」共感から始まるマーケティング
誰もが一度は“顧客の言葉”に裏切られる
「これは売れるはずだと思ったのに…全然反応がなかった」
「ターゲットの声を信じて商品を出したのに、売上が振るわない」
「UX調査を徹底したのに、実際の使用率が低かった」
マーケティングの現場では、こうした“ギャップのある失敗”が日常茶飯事です。
でも、これを経験しているのはあなただけではありません。
むしろ、この“痛み”を知っていることが、本質的なマーケターへの第一歩なのです。
顧客は「ウソをついている」わけじゃない
誤解してはいけないのは、
顧客が意図的にウソをついているわけではないということ。
人は、自分の欲求や行動の理由をすべて正確に把握できるわけではないのです。
- 本人が思っている「欲しい理由」は建前で、
- 実際に心を動かしているのは“無意識の動機”
それが、人間の自然な思考パターンです。
「言葉」だけに頼って設計されたマーケティングの末路
以下のような施策を行ったことがある方は、多いのではないでしょうか。
- アンケートで要望が多かった機能を追加
- 「欲しい」と言われたデザインを採用
- 顧客の声に基づいて価格を下げた
結果的に、「実際は誰も使ってくれなかった」「値下げしても売れなかった」…
この原因はすべて、言葉=ニーズと誤認したことによる設計ミスです。
本音に触れられたとき、施策は動き出す
逆に言えば、顧客が明確に言語化していない“本音のニーズ”に触れると、
施策は一気に動き出します。
- 「まさにこういうのが欲しかった」
- 「なぜかこれだけは無意識に使ってしまう」
- 「言われてみたら、これが一番ラクだった」
こうした反応は、言葉の裏側にある感情・不安・願望にフィットした証拠です。
共感力は、マーケティングの武器になる
顧客の気持ちを理解するには、共感が不可欠です。
あなた自身が過去に、
- 自分でも理由がわからないまま商品を買った経験
- なんとなく続けてしまうサービスとの付き合い
- あえて買い換えない“安心感のあるモノ”への愛着
こういった経験を思い出せば、
「人は論理じゃなく感情で動く」というマーケティングの本質が見えてくるはず。
3. 行動から“本音”を読み取れるマーケターが勝つ時代
顧客は“口”より“手”で真実を語っている
今、マーケティングの最前線では明確な潮流が生まれています。
それは、言葉よりも行動に着目するマーケティングへの転換です。
「アンケートやレビューは役に立たない」
「ユーザーは言っていることと、やっていることが違う」
そんな前提のもと、“行動の観察”に基づく意思決定が当たり前になりつつあるのです。
GoogleもAmazonも、言葉より「行動データ」を見ている
たとえば、Googleが検索アルゴリズムで重視しているのは、「何を検索したか」ではなく、
- その後どのページに移動したか
- どのくらい滞在したか
- 他にどんなキーワードを組み合わせて調べたか
つまり、“検索意図”=ニーズは行動からしか読み取れないと考えているのです。
Amazonも同じです。
あなたが何を検索したかではなく、
何をクリックし、何をカートに入れて、何をスルーしたかで、レコメンドを最適化しています。
行動ベースで設計された商品は、自然と売れていく
本当に売れるプロダクトやサービスは、ユーザーがすでに「やっている行動」から逆算して作られています。
例を挙げてみます
- AirPodsは「ケーブルを煩わしいと思っていた」無意識の行動ストレスに応えた
- スターバックスのアプリ決済は「注文待ち時間のストレスを避けたい」行動を見抜いた
- Netflixの自動再生機能は「続きが気になる視聴傾向」から導かれた
いずれも、「そんなの欲しいなんて言ってないのに、出てきた瞬間に使ってしまった」という現象を起こしています。
これは、顧客の“未来の欲求”を行動から予測した結果です。
無意識の行動は“未来のニーズ”を教えてくれる
ユーザーの行動には、以下のような“ニーズの兆候”が現れます。
- サイト滞在時間が長い=迷っている、不安がある
- 途中で離脱=興味はあるが、決め手に欠けている
- 同じページを何度も訪問=購買直前の心理状態
- お気に入り登録だけしている=価格や信頼性で躊躇している
これらは、言葉では絶対に語られない“真の意図”です。
でも、そこを読み取れるマーケターは、次の一手で必ず成果を出せるのです。
「行動分析 × 感情理解」がマーケターの新しい武器になる
これからのマーケティングで求められるのは、
数字を見る力だけではなく、「行動の裏にある感情」を想像する力です。
- なぜそのタイミングで離脱したのか?
- なぜレビューを書かなかったのか?
- なぜクリックせずにスクロールし続けたのか?
この“なぜ?”を問い続けることが、
行動から本音を読み取る技術を磨く最短ルートです。
4. 本音を見抜けない組織に潜む盲点
“言われたことだけやる”マーケティングの限界
「お客様の声を反映した」
「現場からのフィードバックに応えた」
こう聞くと、一見“顧客中心”に見えますよね。
でも、もしその施策が売上に繋がっていなければ、
本当に顧客のためになっているとは言えません。
最大の問題は、「本音」と「表面上の声」を区別できていないこと。
そしてその根本にあるのが、組織やチームに潜む構造的な“盲点”です。
KPI偏重が「数字は良いのに成果が出ない」を生む
多くのマーケティングチームでは、
- PV数
- CTR
- コンバージョン率
といった定量的な数字をKPIにしています。
もちろん数字は大切です。
しかし、数字だけを追いかけたマーケティングは「人」を見失います。
- なぜそのボタンがクリックされたのか?
- なぜCVRは上がったがLTVは下がったのか?
- なぜ直帰率は低いのに購入に至っていないのか?
こうした“数字の裏にある感情や動機”を考える習慣がなければ、
見えてくるのは「動き」だけで、「理由」はわからないままです。
インサイトを軽視する組織は、すぐ“対症療法”に走る
問題が起きたときに、
- デザインを変えてみる
- 広告文を調整してみる
- 値下げキャンペーンをやってみる
と、目の前の数字を回復させるための小手先の対応に終始してしまう組織。
ここで欠けているのは、「そもそもなぜユーザーが離れたのか」を深掘りする姿勢です。
短期的な成果を求めるあまり、
「行動の裏にある理由」=本音を無視し、
施策が“再現性のないギャンブル”になってしまうのです。
現場の声と、顧客の本音は違う場合がある
営業、カスタマーサポート、SNS運用など、顧客に近い立場の人の声は確かに貴重です。
しかし、ここにも落とし穴があります。
「現場が受け取る声」は、あくまで“聞こえてきたもの”であり、“感じ取られたもの”ではない。
つまり、現場の声=顧客の本音とは限りません。
- クレームはあっても、沈黙する大多数の本音は見えない
- 購入後の意見はあるが、購入に至らなかった人の心理は拾えない
だからこそ、行動ログや購買データを含めた“全体の声”の解釈が必要になります。
「見えていないことを疑えるか」が、組織力を決める
売れている企業、伸びているチームは、
“見えていないもの”に目を向ける習慣を持っています。
- データに表れない「迷い」を想像できるか?
- 顧客が言葉にしなかった“不満”を感じ取れるか?
- 離脱者が最後に見ていたページから「違和感」を読み取れるか?
この感覚こそが、マーケティングの“洞察力”です。
それは、数値を超えた、人を見る力です。
5. 行動から“隠れたニーズ”を引き出す5つの技法
言葉にならない「なぜ」を、行動から読み解く技術
ここまでお伝えしてきた通り、ユーザーの本音は「言葉」ではなく「行動」に表れます。
では、具体的にどのような行動を観察し、どう読み解けば“隠れたニーズ”にたどり着けるのでしょうか?
ここでは、すぐに使える実践的な5つの観察技法を紹介します。
① カスタマージャーニーで「停滞ポイント」を深掘る
カスタマージャーニーマップは、顧客がサービスや商品に接触するプロセスを可視化するフレームワーク。
しかし多くの場合、「停滞しているポイント」こそがニーズの宝庫です。
- 比較ページで長時間とどまる
- 特定の項目で入力をやめる
- ある工程で離脱が急増する
これらはすべて、「ここが不安・不便・不満」という無言のサイン。
ユーザーが何に迷い、何に戸惑っているのかを掘ることで、潜在ニーズが浮かび上がります。
② 商品レビューの「裏の感情」を読む
レビューや口コミは、顧客のリアルな声の宝庫。
でも、星の数や評価だけを見ていては、本音はつかめません。
注目すべきは、
- 「思ったより~だった」
- 「~してくれたらもっとよかった」
- 「最初は~だと思ってたけど…」
といった“意外性”や“変化”が書かれている部分。
ここにこそ、言語化されていない期待や本当のニーズがにじみ出ています。
また、★1や★2の低評価にある「辛辣な不満」ではなく、
★3あたりの“惜しいレビュー”に、改善のヒントが詰まっています。
③ サイト離脱率×時間で「意図」を推察する
Googleアナリティクスなどで、
ページの滞在時間と離脱率の組み合わせを見ると、ユーザーの意図が見えてきます。
- 滞在時間が短く離脱率も高い → ニーズ不一致(入口からズレている)
- 滞在時間が長いのに離脱している → 興味はあるが不安や疑問が解消されていない
- 同じページに何度も訪問している → 購買直前の“迷い”状態
この「行動の背景」にある感情を言語化できれば、
キャッチコピーや導線の見直しでコンバージョンを改善できます。
④ 回遊動線で「迷い」と「比較」を観察する
ECサイトやサービスページなどでユーザーの回遊データを見ると、
「どう決めきれなかったか」が見えてきます。
- 同じカテゴリ内を何度も行き来している
- FAQページと商品ページを往復している
- 複数商品をカートに入れてから削除している
これはすべて、「確信が持てない」「納得できない」心理の表れです。
この“迷い”に対して答えを用意することで、ニーズを的確に満たすことができます。
⑤ インタビュー中の「沈黙」に注目する
定性調査や1on1インタビューにおいて、
最も見落とされがちで、最も重要なのが“沈黙”の時間です。
- 考え込む
- 言葉を探している
- 表現に迷っている
この沈黙には、「うまく言語化できないけど感じている何か」が詰まっています。
そこを追いかけて質問を重ねることで、顧客が自覚していなかったニーズを引き出せるのです。
行動観察は「感情分析」への入り口になる
これら5つの技法は、すべて行動の背景にある感情を読み解くための手がかりです。
- 不満
- 期待
- 驚き
- 迷い
- 安心
こうした感情が何に反応しているかを把握できれば、
あなたのマーケティング施策は“売る”から“選ばれる”へと進化していきます。
6. 次は「感情」からマーケティングを考える
“行動の奥にある感情”が購買を決めている
ここまで、行動データから隠れたニーズを掘り起こす方法をお伝えしてきました。
でも本当の意味で「選ばれるマーケティング」を実現したいなら、
もう一歩、深く踏み込む必要があります。
それが、「感情」にフォーカスするマーケティングです。
人は論理で納得し、感情で動く
「お得だから買った」
「便利だから申し込んだ」
そう言う人は多いですが、実際には、
- 安心したい
- 自信を持ちたい
- ワクワクしたい
- 癒されたい
といった感情が最終的な決め手になっていることがほとんどです。
つまり、行動の背景には常に感情の“うねり”があるのです。
感情に訴えるコンテンツ・UIが選ばれる
現代のユーザーは、理屈よりも「共感」や「気持ちよさ」を求めています。
- デザインが“なんとなく心地いい”サイト
- キャッチコピーに“今の自分を代弁された気がする”商品
- 操作していて“ストレスを感じない”アプリ
こうした“情緒設計”ができている商品・サービスは、
無意識のうちに選ばれるようになります。
だから次は「感情×マーケティング」の視点を持とう
これからのマーケターが身につけるべきは、
ユーザーの「感情トリガー」を正確に捉える力です。
- どんな不安が購買を止めているのか?
- どんな期待が共有・拡散を後押ししているのか?
- どんな共感がリピーターを生んでいるのか?
この感情設計ができるようになると、
商品・広告・導線すべてが「刺さる」ものへと変化していきます。
まとめ
- 顧客の本音は「言葉」ではなく「行動」と「感情」に出る
- 表面的なニーズに惑わされないマーケティングこそ成果につながる
- 行動を観察し、感情を読み解くことがこれからのマーケターに求められるスキル
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