1. その提案、ズレてませんか?
お客様の「ニーズ」を履き違えていませんか?
「うちの商品は、お客様のニーズにぴったりなんです」
そう胸を張って言った営業担当者。でも実際に蓋を開けてみたら、まったく響かなかった。むしろ「え?それじゃないんだけど…」という微妙なリアクション。
こんなズレ、思い当たることありませんか?
マーケティングや商品開発、コンテンツ企画において、「ニーズを捉える」というのはよく聞く言葉です。ですが、その「ニーズ」という言葉、実はかなり誤用されやすく、曖昧に理解されがちなのです。
「ニーズ=欲しいもの」ではない
たとえば、あるカフェが「若い女性のニーズに応えるメニューを開発しました」として、インスタ映えするカラフルなドリンクを提供し始めました。SNSではそれなりに話題になりましたが、半年後には売上が減少。なぜでしょう?
それは、そのカフェが捉えていたのは「ウォンツ(欲望)」であって、根本的なニーズではなかったからかもしれません。
本当のニーズは、「ゆったり過ごせる場所がほしい」「友達と落ち着いて話せる空間がほしい」といったもっと深い、人間的な欲求だった可能性があります。
ニーズ・ウォンツ・デマンズの混同が、企画の失敗を招く
企業がよかれと思って作ったキャンペーンやサービスが、なぜかまったくヒットしない。SNSでシェアされず、売上も伸びない。
その多くの原因は、「ニーズ」「ウォンツ」「デマンズ」の理解不足にあります。
それぞれの違いを整理せず、なんとなく「欲しそうなもの」を提供してしまうと、ユーザーの“本当の欲求”から外れた提案になってしまいます。結果、行動につながらず、「なんか違う」で終わってしまう。
こんなミス、あなたの周りでも起きてませんか?
- お客様の声に応えて新機能を追加したのに、まったく使われない
- ターゲットを絞ったつもりなのに、誰にも刺さらない広告になっている
- 「欲しいと言ってたのに買わない」理由がわからない
これらはすべて、「ニーズ」「ウォンツ」「デマンズ」の違いを理解していれば防げたミスです。
今回の記事の目的
この記事では、マーケティングの現場で重要な3つのキーワード──
「ニーズ」「ウォンツ」「デマンズ」の違いと、その正しい使い分け方、そして売れる戦略への応用方法を、具体例とともに解説していきます。
次のセクションでは、読者のあなたが「それ、わかる…!」と感じる、共感の場を用意しています。
2. わかる、その違和感
「お客様はそう言ってるけど…本当に求めてるのはそこじゃない」
マーケティングの現場で、こんな経験ありませんか?
「アンケートでは“〇〇が欲しい”って言ってたのに、リリースしても売れない」
「ユーザーインタビューで出てきたニーズを反映したのに、反応が薄い」
「“こんな商品があったら嬉しい!”って言われたのに、買ってくれない」
そう、それこそが“マーケティングの罠”。
お客様の言葉をそのまま信じてしまうことが、最大の落とし穴なんです。
ウォンツの裏にある「本音」が見えていない
たとえば、ある女性が「忙しい朝でも手軽に栄養が取れる朝食が欲しい」と言ったとします。
あなたはすぐに「じゃあスムージーだ!」と考えて、新商品を開発。
でも実際は、スムージーは冷たすぎて朝にはキツいと感じられ、あまり売れなかった…。
この時、見落としていたのはその人の“ニーズ”が「健康的な体を維持したい」や「朝のストレスを減らしたい」という、もっと根源的なものだったということ。
つまり、「スムージーが欲しい」はウォンツ。
でもその奥には、満たしたいニーズが隠れていたんです。
みんな「ウォンツ」を口にする。だけど本音は「ニーズ」
人は、日常会話やアンケート、レビューの中で「ウォンツ」を話します。
- 新しいPCがほしい
- おしゃれなカフェに行きたい
- 時間をかけずに痩せたい
でも、これらはすべて表層的な欲望。
マーケターが向き合うべきは、その奥にある動機や感情=ニーズなのです。
だからマーケティングには「共感」が必要
ニーズを正確に捉えるために必要なのは、共感力と洞察力です。
「この人は、なぜそう感じているんだろう?」
「その欲望の奥に、どんな願いが隠れているんだろう?」
その問いを持てる人が、真に売れる商品やコンテンツを生み出すことができる。
「わかる、それあるよね」から始まる、売れるマーケティング
読者のあなたがもし、「お客様の言葉が信用できない」と感じたことがあるなら、
それは正しい感覚です。
その違和感こそが、ニーズへの入り口なんです。
次は、そんな“違和感”を超えた先にある、理想的なマーケティングの未来像を描いていきましょう。
3.本当のニーズを捉えれば、売れる
「なんで売れたのか」が説明できるようになる未来
想像してみてください。
あなたが企画した新商品が、発売初週で予定数の150%を売り切る。
広告を打った瞬間、SNSでバズが起きて、「これ待ってた!」というコメントが殺到。
そのとき、あなたはこう思うはずです。
「ああ、ちゃんとニーズを捉えられたんだ」
ニーズを正確に理解し、形にできたマーケティングは、説明のつく成功をもたらします。
なぜ売れたかがわかる。だから、再現できる。次もヒットさせられる。
顧客の“言葉になっていない欲求”に応えられるようになる
これからのマーケター・クリエイターに必要なのは、お客様が言語化できない「本当の欲求」に気づき、先回りして提案する力です。
たとえば、
- 子育て中の母親が「毎日バタバタでしんどい」とこぼしたとき、
→ 単なる時短グッズを売るのではなく、「自分の時間を取り戻せる30分」を設計する。 - サラリーマンが「通勤がダルい」と言ったとき、
→ 交通手段を変えるよりも「通勤時間が自己投資になるオーディオ学習サービス」を提案する。
こうしたアプローチは、ニーズを正確に掴んでいるからこそできる発想です。
ニーズ→ウォンツ→デマンズの流れを制する者が、マーケットを制す
理想のマーケティングとは、こうです。
- ニーズを発見する(例:人は「健康でいたい」と願う)
- ウォンツに変換する(例:「糖質オフのスイーツが食べたい」)
- デマンズに導く(例:購買力のある層に「糖質オフスイーツ」を適正価格で提案)
この流れが設計できると、「売れる確率」が跳ね上がります。
逆に、ウォンツだけを狙って広告を打っても、「売れないキャンペーン」に終わってしまうのです。
あなたの提案が「自然に選ばれる」未来へ
理想的な未来とは、商品をゴリ押ししなくても、お客様から選ばれる状態。
それは、本当に必要としていたものを差し出されたときの、自然なリアクションから生まれます。
- 「これ、探してた!」
- 「なんで私のことわかるの?」
- 「まさに今ほしかったやつ」
マーケティングの目的は、「売り込むこと」ではなく、「選ばれること」。
その鍵は、「ニーズを見抜く力」にあります。
4. 3つの言葉の混同が命取りに
なぜ、わかってるつもりでもズレてしまうのか?
多くのマーケターや企画担当者がつまずくのは、ニーズ・ウォンツ・デマンズの混同です。
これら3つの違いをきちんと理解せずに動くと、どれだけ時間をかけたキャンペーンも、見当違いのプロダクト企画も、成果につながらないことがほとんどです。
でも…正直、日々の忙しさの中で「そこまで細かく分けて考える余裕がない」というのも本音では?
その油断こそが、マーケティングの最大の敵になります。
間違いやすい例1:ニーズだと思っていたのは、ただのウォンツ
あるオンライン英会話サービスが、「ユーザーは『ネイティブ講師と話したい』と言っている」と信じて、全員ネイティブ講師に変更。結果、リピート率が下がった。
なぜか?
本当のニーズは「英語に自信が持てるようになりたい」ことであり、
ネイティブ講師だと話についていけず、「自信を失う」人が多かったから。
間違いやすい例2:ウォンツだけで商品を設計する
「便利そう」「SNS映えしそう」だけで作った商品は、話題にはなるが売れないことが多い。
なぜなら、それは一時的な興味(ウォンツ)にすぎず、継続的な購入(デマンズ)には至らないから。
ニーズという“土台”がないままのウォンツ戦略は、砂上の楼閣です。
間違いやすい例3:デマンズを確認せずにマーケットイン
- 商品はある
- 欲しがってる人もいる(ウォンツも確認済)
- でも、買うだけの余裕がない
そんなとき、マーケターが「なぜ売れないのか?」と悩み始める。
それは、デマンズ(購買力を伴った欲望)を見極めていなかったからです。
真の障害は、「わかっているつもり」になること
一番やっかいなのは、「ニーズ=欲しいもの」という感覚的な理解で止まってしまい、
それ以上深掘りしなくなることです。
でも、ニーズを「欲望」だと誤解している限り、
顧客の本質的な動機には絶対に届かない。
正しく見抜く3ステップ
- ニーズ:なぜそれが欲しいのか?
→ 例:「痩せたい」=健康を維持したい、不安を減らしたい、魅力的に見られたい - ウォンツ:そのために何がしたいのか?
→ 例:「ジムに通いたい」「糖質制限したい」 - デマンズ:実際に買う余裕があるか?
→ 例:「月1万円のジム代を払えるかどうか」
これを怠ると、せっかくのマーケティングも空振りに終わります。
5. 3つの視点を見抜くマーケターになる
明日からできる!ニーズ・ウォンツ・デマンズの実践活用術
ここまで読んでくださったあなたは、すでに「なんとなく」のマーケティングから一歩抜け出しています。
でも、知識は実践してこそ意味がある。ここからは、今日から使える具体的なステップを紹介します。
ステップ①:ヒアリング・リサーチの質問を変える
今まで:
「どんな商品があれば嬉しいですか?」(=ウォンツしか拾えない)
これから:
「なぜ、それが欲しいと思ったのですか?」(=ニーズを掘る)
「それがあれば、どんなことが解決しますか?」(=ニーズと繋げる)
ユーザーの“言語化できていない動機”を引き出す質問を設計しましょう。
ステップ②:3層マッピングでターゲット心理を可視化
「ターゲットの欲求マップ」を以下のように作ってみてください。
レイヤー | 内容例 |
---|---|
ニーズ | 健康でいたい、自信を持ちたい、時間がほしい |
ウォンツ | ヘルシー弁当、筋トレアプリ、時短アイテム |
デマンズ | 月額3,000円以内、アプリで使える、買いやすい価格 |
これをペルソナごとに作成すると、商品やコンテンツの「どこに刺さるか」が明確になります。
ステップ③:セールスコピーや広告文にも3層構造を反映
例えば商品LPでは、以下のように構成を組むと効果的です。
- ファーストビューでウォンツに訴求:「あなたの“〇〇したい”をすぐに叶える」
- ボディコピーでニーズに触れる:「実は、〇〇な悩みが根本原因ではありませんか?」
- オファー設計でデマンズを後押し:「今だけ〇〇円で始められる、無料体験付き」
この順序が、顧客の心理変容プロセスにフィットします。
ステップ④:社内やチームで「言葉の定義」を統一する
意外と盲点なのが、チーム内で「ニーズって何?」「ウォンツってどう違う?」の定義がバラバラなこと。
これは施策のズレ、意思決定の遅れ、結果の乖離を生みます。
- 社内用語集をつくる
- 企画書で「この施策は●●のニーズに対応」と明記する
- 定例会で「これはウォンツ?デマンズ?」と確認する習慣を持つ
このような共通認識が“売れる現場”を育てます。
ステップ⑤:ニーズベースでコンテンツを設計する
ブログ、SNS投稿、メルマガ…すべてのコンテンツは「ニーズ」に立脚すべき。
たとえば以下のように変換していきます。
- NG:「こんな商品が便利ですよ!」(→一方通行なウォンツ提案)
- OK:「〇〇で悩んでいるあなたへ。こんな方法があります」(→共感ベースでニーズ訴求)
コンテンツが読者の“心の中の声”に応えるものになると、自然に共感と反応が得られます。
ニーズ・ウォンツ・デマンズという3つの視点を使い分けることで、マーケティングやコンテンツ設計の精度は一気に上がります。
でも――
一番難しいのは、「本人さえも気づいていないニーズ」をどう見つけるかということ。
たとえば、
- 「時間がない」と言いながら、ついSNSに何十分も費やしてしまう
- 「お金がない」と言いながら、サブスクはやめられない
- 「疲れてる」と言いながら、予定をぎっしり詰め込んでしまう
こうした行動の裏にある“隠れたニーズ”を見抜くことができれば、
商品やサービスの提案はグッと刺さるものになります。
まとめ
- ニーズ=根源的な欲求、ウォンツ=形になった欲望、デマンズ=購買力を伴った需要
- この3つを見分け、組み立てていくことが、売れる企画の土台になる
- 共感・洞察・再現性が、これからのマーケターの武器になる
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